2017年4月17日

THE GREAT WALL -長城-

マット・デイモン主演の『THE GREAT WALL -長城-』を観てきました。
めっちゃ良かった! これは優れたファンタジー作品ですね。
否定的で酷評とも言えるネガティブな評価が多いそうですが、万里の長城を舞台にしているもののファンタジーだと思って観ると楽しめます。戦闘も大迫力でかっこいいし、太鼓を打ち鳴らして士気を鼓舞するシーンが好き。
脚本もいいし、名作ですね。

大変素晴らしい映画でしたので、感想とか考察とか意見とかを久々に書こうと思います。
ブログ読書会ですね。

この物語は考察できるエッセンスが非常に多いので、観終わった後も楽しめる映画です。
酷評している奴らはたぶんこの作品の物語に込められたテーマやメッセージについて考えようともしてないんでしょうね。まともな脳みそ持ってないんじゃないかな。

それではどうぞ↓




※以下ネタバレを含みます。ご承知おきください。


『THE GREAT WALL -長城-』のストーリーには物語のお手本とも呼べる構成がたっぷり詰まっています。
ただ、そういう理屈抜きでも楽しめます。むしろ、何も考えずに観て楽しむことができる映画でしょう。

まず初めに、大前提として物語には「話型」というものが存在します。
最もオーソドックスな話型は、内側から外側の世界に旅立ち、敵を倒して帰ってくる「桃太郎方式」の話型です。鬼退治をして帰ってくる。
有名な映画作品では『ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)』などがあります。
大体はこの話型に当てはまります。ドラクエとか。

でもこの『THE GREAT WALL』は少し違って、外側からやってきて、内側に行き、また外側の世界に帰っていくという形をとっています。
じゃあお手本とは呼べないじゃないか、そうお思いでしょうか。結論から言うと、それは違います。
一つずつ解説しましょう。


①外側からやってくる

主人公の傭兵ウィリアムは、万里の長城の外側の世界からやってきます。

このファンタジー映画では、万里の長城が築かれた真の目的は、饕餮(トウテツ)というモンスターから都市を守るためのものです。
饕餮とは中国神話に登場する妖怪・怪物で、「体は牛か羊で、曲がった角、虎の牙、人の爪、人の顔などを持つ」とウィキペディアに載っています。

トウテツはファイナルファンタジー15にもフィールド上にうじゃうじゃと登場するので馴染み深いモンスターですね。
また、「饕餮文(とうてつもん)」と呼ばれる模様が描かれた青銅器も博物館などで見かけた方もいるかもしれません(ウィキペディア参照)。

このモンスターが登場したのは神話や伝説に基づいていますが、この作品では「隕石が落下したころから饕餮が現れるようになった」とされていることが非常に興味深いです。
つまり、隕石には微生物に類似した原生生物や寄生虫、あるいは磁場や放射能を持っているものもありますから、突然変異によって地球の生物がモンスターになってしまったと言っているわけです。
そこで先ほど引用した饕餮の体の描写を見てみましょう。牛か羊が隕石の放射能によって突然変異を起こして饕餮という異形の存在になった。
十分説得力のある設定ですね。


微生物や原生生物の影響は考慮しません。その理由は、磁石を近づけると彼らの超音波の周波数が役に立たなくなるから。磁場の影響を受けている。まさしく隕石の影響によって進化した生物であることの証左に他なりません。

話を戻しましょう。
万里の長城が物語の話型にとってなくてはならない「境界線」の役割をそのまま担っています。つまり、内側と外側を分けるものであります。

ここで饕餮の名前の由来に目を向けてみます。
「饕」は「財を貪るもの」「餮」は「食を貪るもの」という意味があります。
ウィリアムが弓の演武をした後でリンと食事をするときに、自分の過去について話します。傭兵になった初めの頃は食べ物のために兵士として働き、食えるようになってからは金のために働いたと言っています。

お気づきでしょう。ウィリアムの過去は、まさしく財と食とを貪るものです。
この作品の序盤では、外側からやってくるウィリアムも彼と旅をしてきた友人トバールも、山賊たちも、みんな財と食とを貪るものなのです。これはつまり、ウィリアムたちは饕餮と同じであると言っているのです。
だから外側から来たんですね。むしろ、外側から来なくてはならなかった。序盤では、決して内側から来てはならなかったのです。


②境界線

万里の長城は明確な、物理的にそのまま「境界線」として描かれています。
ウィリアムは禁軍-The Nameless Order-の戦いに触れ、リンから祖国のため、大義と信任のために戦っているのだと聞かされます。
過去の自分は財と食とを貪る浅ましい、それこそ怪物と分け隔てのない低俗な存在であったと気づき、葛藤が生じます。

だから火薬はもう諦めて、この「境界線」に留まり、過去の自分と決別すべく禁軍-The Nameless Order-の戦力に力を貸すことにしました。
素晴らしい脚本ですよね。王道ですよ。

この物語はただのモンスターとの戦いをファンタジックに描いただけではないとここまで読んでおわかりいただけたでしょうか。
この物語は、饕餮と禁軍-The Nameless Order-との戦い、つまり、財と食とを貪る低俗な存在(饕餮や過去のウィリアムなど)と、大義と信任のために戦う崇高な存在(禁軍-The Nameless Order-)との戦いなのです。

ところが、この万里の長城に穴があけられてしまいます。戦いは陽動のためのおとりで、本当の目的は長城に穴を掘ることだった。
饕餮が内側の世界に入り込み、都市部にモンスターが跋扈し始めます。

これは何を意味するかというと、ただの起承転結の「転」部分ではありませんよ。
国の役人が登場しましたよね。彼は軍師がまだ調べたいことがあると言ったにもかかわらず、饕餮を捕まえたら皇帝にすぐ差し出すのが勅命だとか何とか言って、権力か財力か(あるいはその両方)を手に入れようと自分の手柄のように皇帝に献上しましたね。
皇帝も皇帝で遊び半分で何も知らず磁石を遠ざけて興じていましたね。
つまり、饕餮が内側にいるんですよ。皇帝と役人という饕餮=財と食とを貪るものが。

リンもウィリアムに権力を持ったものは外の国でもこんなふうなのかと訊き、ウィリアムが「強いものは好き放題だ」と言ってのけることからも明らかです。
お前が磁石を遠ざけて遊んでなければ饕餮の周波数による会話もなく、都に攻められることもなかっただろうにね。自分の不始末を棚に上げて、よくも抜け抜けと禁軍-The Nameless Order-のことを批判できるよな(笑)
その滑稽さが実によく描かれていますね。


③外側に帰っていく

さて、状況が一転しました。ウィリアムが来た外側の世界はもはや饕餮のいた世界ではありません。
帰るべき故郷のある内側の世界となりました。逆に、愚かな皇帝や役人、貴族たちのいる首都のほうが、饕餮のいる世界=外側の世界です。


リン将軍も西方の部隊に配属になり、都市部からは去っていきます。
敵を倒して、敵のいる場所から離れる。状況が逆転したことで、話型に当てはめることができそうです。

話型だなんだと言っても、おとぎ話から最近の小説まであらゆるものに当てはめてしまうと陳腐化してしまいます。それにこういうひねりを加えた、一味違う物語だからこそ新鮮味もあるし、面白いと言えるのだと思います。

ウィリアムも火薬をとるか友人を取るか選択を迫られましたが、一も二もなく友人を選びましたね。火薬はあっさり捨てた。俗なものではなく、信と義を取ったわけです。トバールに詰め寄られたとき、嘘つきだ殺人者だなどと罵られるウィリアムでしたが、過去の自分とは見事に決別できたわけですね。
まあそのあとリンと話すときに、「やっぱり火薬にするかな」などと冗談を言っていますが(笑)


いかがでしたでしょうか。
こういう考察のできる映画は本当に優れた作品だと思いますね。
最近観た『パッセンジャー』というクソSF映画はまったく考察の余地なく脚本が映像美を台無しにしてしまっているひどい作品でした。

なぜ『THE GREAT WALL』の評価が低いのか納得できませんね。こうして物語を紐解いてみれば非常に興味深くて面白いテーマやメッセージ性があるというのに、残念でなりません。
しかもこうして難しく考えるのは観終わった後でよくて、観ている間は一切何も考えずにただ楽しめるという稀有な作品でもあります。

敵モンスターの能力ですが、『インディペンデンス・デイ リサージェンス』(続編のほう)の敵エイリアンに似ているのも良いと思いました。
奴らも女王がいて、ハチ目の昆虫(蜂やアリ)のように社会性を持っている。隕石の飛来によって突然変異を果たしたモンスターだからこそ、似通った能力を持っているのは当然と言えるでしょうね。

マット・デイモンはもちろん最高の演技を見せてくれましたが、リン将軍の景甜(ジン・ティエン)も素晴らしい女優さんですね。美人だし、毅然とした態度の演技と、前将軍が亡くなった時に見せる涙のシーンが印象的でした。なんと彼女、同い年。びっくり。
第18回ハリウッド映画国際賞を受賞しており、『キングコング 髑髏島の巨神』にも出演するそうですよ。

『THE GREAT WALL』 騙されたと思って観に行ってみてください。最高に面白い映画ですよ。
特に物語を作る人、小説家を目指している人とか、一度はこのストーリーを観ておいたほうがいいと思いますけどね。物語づくりの参考に大いに役立つはずですから。

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